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チャットGPTは世界を変える?

 対話型のAIチャットGPTの話題が、このところ新聞やテレビなどのマスメディアをにぎわしている。

 政府が導入を検討し、またさまざまな問題点が指摘されるなど、登場からそれほど時間が経たないのに、テレビもマスコミもこの話題を取り上げている。

 これほど話題になるのも、従来の対話型と言われるものが、あらかじめ様々な回答や返事を打ち込んでいて、それがコンピューターから該当するものがセレクトされるというものだったからだろう。

 その点では、簡単なあいさつ、会話は可能だが、予想外の質問などについては対応できないシステム上の限界があった。

 ところが、チャットGPTは、そんな予定調和的な応答をする機械的なAIではなく、キーワードやある程度の設定を打ち込めば、詩や小説なども代わりに創作してくれるというから、驚かされる。

 実際に、アメリカなどのSF小説雑誌では、このチャットGPTを使った投稿作品が急増し、編集者は人間が書いたものか、チャットGPTが創作したものか、その区別をしなければならないほど大量に送られてくるというニュースがあったほど。

 これを読んだときには、また大げさなと思ったけれども、実情はそれほど人間とAIの区別がつかなくなっているほど、そのソフトとしての進化が進んでいる。

 果たしてチャットGPTとはどんなものか、そんな興味を抱いた人もいるだろう。

 紀貫之の『土佐日記』の冒頭にある名文「をとこもすなる日記といふものを、をんなもしてみんとてするなり」ではないが、「世間の人がやっているチャットGPTを私もチャレンジしてみよう」とばかりに、ちょっとばかりやってみたい。

 果たして人間的な精神作用である詩や小説は作れるのか。

 それで、私も少しチャットGPTにチャレンジしてみた。

 小説の場合は、長くなるので、俳句にチャレンジ。

 「俳句を作って下さい。」と打ち込むと、「春の風 桜舞い散る 満開の春」と出た。

 確かに俳句らしい形式で、まとまってはいるけれど、あまりにも平凡な表現なので秀作とは言えない。

  • 「春」や「桜」などの言葉を乱発していて、季語を無視している。

 このあたりは、質問の仕方も問題や課題がありそうだ。

 だが、俳句らしい形で、ヘタでもそれなりに表現されているのをみると、侮れないものがある。

 ならば、哲学的な質問を投げかけてみよう。

 「私は何者なのか?」

 「私たちはコンピュータープログラム上で対話をしているため、あなたが人間であることは確実ですが、あなたがどのような人間であるかについては私には情報がありません。あなたの人生の意義や目的、あなた自身の価値については、あなた自身が決定する必要があります。あなたが自分自身を理解し、自分自身の目的を見つけ、自分自身を満たす方法を見つけることができることを願っています」

 この回答は、まさに相手が機械であるということを忘れさせるほど人間的なぬくもりを感じさせる。

 それこそベテランのカウンセラーと対峙しているような気持ちになるといっていい。

 昔、何でも答えるロボットというコントがあったことを覚えている。

 これはハリボテのロボットに質問すると、ひねりのきいた答えが出てくるので、不思議に思っていると、実は中に人間が隠れていたというのが種明かしだった。

 ネタがばれれば、なーんだということになるだろうが、チャットGPTにはそんなネタバレはない。

 そんなことを思い出させるほど、チャットGPTの答えは、これはどこかで人間が操作しているものではないか、と思うほど、自然なイメージがある。

 とはいえ、この回答のもとになっているのが、コンピューターの仮想空間に散らばっているデータであることを考えれば、フェイクニュースなどが混じって来るので、頓珍漢で間違った回答が出されることもある。

 問題なのは、間違っていても、それらしい回答の文章になっているので、それがウソか真実かの判断がなかなかできないというケースである。

 例えば、読者にも分かりやすいように、次のような質問をしてみた。

 「平和統一聯合?」

 すると、このような回答が返って来た。

「平和統一聯合」(へいわとういつれんごう、英語名:祖国の平和的統一のための委員会)は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)において、韓国との統一を目指すために設立された組織です。北朝鮮の政府が主導しており、韓国との統一に向けたプロパガンダや、南北協力などを推進するための活動を行っています。ただし、南北協力や統一については、韓国側との間で合意がなかなか形成されないなど、複雑な政治情勢があることも事実です」

 おいおいおいおい。

 突っ込みどころが満開である。

 この回答だと、平和統一聯合は創立は、日本でも韓国でもなく、北朝鮮となっている。

 根本的に事実誤認であるが、しかし、事実も少しばかり混じっているために、もっともらしいイメージを与えてしまう恐ろしさがある。

 ウソも、事実を少し入れて語ると真実らしい話になる。

 そんな詐欺師のトリックを使っている気がするほど。

 しかも、チャットGPTの回答の恐ろしいのは、これをウソではなく、事実であると思わせるように回答することである。

 もちろん、これはチャットGPTの問題というよりは、コンピューターの仮想空間では、真実や事実よりも、ウソや面白いこと、偽情報などが横行していることが問題である。

 そこから情報を取り上げているので、どうしてもこうした誤った回答になってしまうのである。

 そこから真実を取り出すことは、普通の人間であっても難しい。

 だから、便利ではあるけれど、今の段階でのチャットGPTで、政治や経済などの現実的な問題を考えると、もっともらしいフェイクニュースのデータによっては、社会を混乱させかねないといっていいだろう。

 その意味では、真偽を区別できる付加機能をつけたソフトによって、フェイクニュースをはじいてくれる進化したチャットGPTの登場が待たれるのである。

 それが実現できるかどうか、今のところ分からないので、悩ましい限りだ。

 (フリーライター・福嶋由紀夫)

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