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黄七福自叙伝「差別問題のシンポのこと」/「外登法・入管令の改正を要望したこと」

 

黄七福自叙伝59

「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」

 

第4章 民団大阪本部の団長として

差別問題のシンポのこと

民団大阪本部は一九七七年九月十五日、中之島中央公会堂で一千余人が参加したなか、「なにが問題なのか? 在日韓国人の差別問題を考える」と題するシンポジウムを開催した。

当初は「韓日弁護士協議会設立総会」を開く予定であった。法務部長官の許可も下りて、韓国から二十人の弁護士が来ることになっていたし、午前十時過ぎには到着の予定だった。

ところが、前日の夜の十時のことだった。ソウルから連絡があって、「明日ことだが、弁護士の訪日は難しくなった」ということになった。

理由を問うと、金大中問題で日韓関係がゴチャゴチャしていた時で、弁護士のなかに金大中を熱烈に支持する者がいるから、日本のマスコミが追い回して悪い報道になったら、法務部長官の進退問題に波及する恐れがあるということだった。

「日本側にはカドが立たないように円満に説明してほしい」ということで、仕方なく、「重要な会議があって、来られなくなった」と説明した。

この説明に、日本側弁護士二十六人は急きょ「日本側設立準備会合」に切り替え、シンポジウムの開催となったのである。

このときも中央本部はなんの助けにもならなかった。

富士の社長は「大きな事業を推進するときに、全国を指導し、統括する力がなかったら、何もならん。カネだけくう中央本部は必要ない」と激怒するほどだった。

シンポジウムで、私は、「韓日両国は過去、不幸な歴史を持った。この不幸な歴史を二度とくり返さないためには在日韓国人が日本社会で、差別と偏見を受けず、日本の国民と同等の立場で、幸福に平和に暮らせるようになることだ。これはまた、将来にわたっての韓日両国友好親善の大きな絆になるものと確信している。在日韓国人にかかわる種々の行政差別に対する理解を深めて戴きたい。法律家と在日韓国人が一体となってこの問題を解決する契機にしてほしい」と挨拶した。

民団法曹協会会長の相馬達雄弁護士は、「民団大阪本部で生活相談室を担当しているが、毎回十件以上の様々な法律相談が持ち込まれるほど好評で、改めて在日韓国人の人権擁護のため日韓弁護士協議会の設立の必要性を痛感した」と述べた。

シンポジウムは、曺寧柱民団中央本部団長、田駿民団中央本部「差別白書」編集委員長、日本側から民社党の中村正雄、中野寛成両衆院議員、藤原恵全国人擁護委員連合会副会長、山本浩三元同志社大学長、山崎忠志韓国民団法曹協会副会長らによって行われた。

 

[声明文]

今日、日本社会にあるわれわれ在日韓国人に対する民族的な差別と偏見はわれわれの健全な人格形成、平穏な日々への期待を陰に陽におびやかしつづけている。

われわれが現在さらに将来にわたって、この地で安定した生活を築いていくためには、かかる差別の現実をいかに克服していくかが大きな課題となろう。

シンポジウムで示された数多くの差別的な処遇の実態はわれわれの困難な生活環境を浮き彫 りにした。

われわれはこれらの不当な民族差別を許容するものではなく、人間の尊厳と生存の権利を守るための闘いをつづけることを決意する。

在日韓国人は”日帝三十六年”という過去の不幸な関係によってもたらされた歴史の所産であり、現在われわれがかかえている諸問題は、この事実を抜きにしては語れない。

われわれはこのような観点から、日本が侵略戦争の誤ちに対する反省から民主的な新憲法を制定し、民主主義国家への歩みを始めたが、今なお在日韓国人の人権がいちじるしく無視されていることに対して、日本の責任を強く指摘する。

まして、韓国と日本は一九六五年の韓日国交正常化の時点から友好国としての関係を築き、在日韓国人の問題については、その前文で「これら大韓民国々民が、日本の社会秩序の下に安定した生活を営むようにすることが、両国間および両国国民間の友好関係の増進に寄与することを認め」と日本での安定した生活を保障した韓日法的地位協定、内外人平等の原則を明確に打ち出した国際人権規約の基本精神にてらしても、在日韓国人に対する処遇改善は早急に解決されるべき課題として、時代的にも要請されている。

「人はすべて、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上もしくは他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、門地または他の地位というようないかなる種類の差別も受けることなしに、この宣言に掲げられているすべての権利と自由とを享受する権利を有する」と世界人権宣言の基本精神をまつまでもなく、人権尊重はいまや世界のすう勢であり、われわれに対する処遇改善は日本の民主主義の問題である。

われわれは過去の特殊な歴史的関係を経て、ここに堅実で永続的な生活基盤を有するに至ったものであり、等しく、日本社会を構成する一員としての義務を果たす以上、それに見合う社会的な恩恵を日本国からうける権利を主張する。

解放後三十余年を経た今日、この時代をわれわれは過去に失った人間的諸権利の回復の時代と位置づけ、日本社会から、われわれに対する差別が一掃される日がくるまで、日本国民の理解と協力を得ながら権益擁護運動をつづけていく決意を新たにすることをここに声明する。

一九七七年九月十五日 「何が問題なのか」在日韓国人の差別問題を考えるシンポジウム

在日本大韓民国居留民団大阪府地方本部団長 黄七福

 

外登法・入管令の改正を要望したこと

民団大阪本部を代表世話人とする在阪十六団体は一九七八年一月、「外国人登録法ならびに出入国管理令の改正してほしい」との要望書を大阪入国管理事務所、大阪府、大阪市、大阪府警察本部等に提出した。

要望書内容は

①外国人登録証明書の常時携帯提示義務の免除

②指紋押捺義務の廃止または軽減

③外国人登録明書の切替え(確認)申請制度

④再入国許可制度

⑤家族招請入国許可緩和

⑥協定永住権者及永住者に対する退去強制の廃止

⑦潜在居住者の処置

についての七項目であった。

大阪入国管理事務所の藤原次長は「言葉の違いなどで外国人のみなさんが窓口において良い気持ちをしないのは分かる。今後、みなさんからの運用面の要望は、職員に十分伝達する。ただ、法改正の必要な入管令に関しては、法務省に陳情の趣旨を十分に伝える」と答えた。

なお十六団体は、民団大阪府地方本部、民団近畿地区協議会、在日大阪婦人会大阪府本部、青年会大阪本部、大阪韓国人商工会、体育会関西本部、在郷軍人会関西連合分会、大阪韓国人納税組合連合会、韓国大阪青年会議所、大阪母国訪問推進委員会、在日大韓基督教関西地方連合会、在日大韓仏教会総本部、在日韓国人権益擁護委員会、在日韓国新聞通信協会、大阪日韓親善協会、韓国民団法曹協会。

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