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『二十一世紀の朝鮮通信使 海路をゆく 対馬から大坂』 対馬―日朝を結び、善隣外交を担う


 秀吉の朝鮮侵略は、日本国内に疲弊をもたらした。文禄・慶長の役で、それぞれ16万前後の大軍が出兵したが、帰国できたのはどちらとも半分以下。労働力不足に拍車をかけた。対馬も例外ではない。島内の『洲河(すがわ)家文書』には、「殊外(ことのほか)御ちん(陣)二付、いたミ申候へ共、人もすくなく罷(まか)り成り候」とある。秀吉亡き後、薩摩国出水郡内の所領1万石にかえて肥前国内に1万石余、さらには米の現物1万石も、対馬に与えられた。しかし、再生のカンフル剤には遠い。対馬は、侵略戦争で途絶えた朝鮮貿易復活に活路を求めていた。
 天下取りの過程で家康が朝鮮側へ申し入れた、いわゆる国交修復と朝鮮通信使派遣は困難を極めたが、生き残りをかけた対馬藩の執念でこじ開けられる。

 釜山には1680年代に約10万坪の日本人居留地、倭館が整備され、対馬藩士が交代で400人から500人が常駐。外交交渉や貿易に従事した。公貿易、私貿易で朝鮮から入手した朝鮮人参は、三都では高嶺の花となり、貿易で得られる利益は莫大なものとなった。
 さらに、朝鮮王朝が派遣した朝鮮通信使は、対馬藩にとって大きな利益を生み出した。対馬経済のカンフル剤となった。いわば打ち出の小槌といえた。その理由は、
 ①幕府から助成金が下りた
 ②島の施設、港湾整備ができた
 ③朝鮮王朝からの贈り物で潤った
 ④沿道の各藩から指導料や協力金を入手できた
 ⑤朝鮮人参の商いを独占できた、などである。

 1764(宝暦14)年から途切れた通信使派遣のため、対馬藩側から朝鮮の文官に賄賂が贈られ、通信使派遣の裏工作が進められた。この交渉には、対馬藩の外交官、雨森芳洲が創設した韓語司(いわば外交官養成学校)を草創に卒業した小田幾五郎が主導した。その甲斐あって、やっと1811(文化8)年に派遣されたが、対馬止まりという制約付きだった。
 対馬は、大陸文化を導入する橋梁である、古来から朝鮮と交流が盛んな国境の島である。中世は倭寇、近世は朝鮮通信使に象徴される。
 対馬の威容は、厳原の町を散策すれば、よく分かる。万松院、西山寺、修善寺、長寿院にある雨森芳洲(対馬藩の外交官)の墓、半井桃水(樋口一葉の小説の先生、朝日新聞・小説記者)生地跡記念館…。それに必見のお宝がある。厳原八幡宮の三十六歌仙蒔絵である。家光将軍の時代、国書改ざん事件が発覚した。朝鮮外交を幕府から一任された対馬藩は、交渉をスムーズに進めるため、国書を改ざんしていた。江戸滞在に対馬藩の重臣・柳川調興が訴え、表面化する。お家断絶の危機に揺れるなか、安泰を祈って三十六歌仙蒔絵が奉納された。
 宗家の菩提寺、万松院の墓地は日本3代墓地の一つに数えられるほど壮大である。本堂には歴代の徳川将軍の位牌がずらりと並ぶ部屋もある。また、かつての武家屋敷の石塀や、通信使の宿舎となった西山寺と国分寺など、対馬藩のかつての賑わいを伝える佇まいが、今も厳原町内に残っている。

 室町幕府、江戸幕府にとって辺境の島ではあるが、朝鮮外交、貿易によって日本でも開明的な土地として、一目置かれた。
 対馬は「本と是れ我国の地」(世宗実録)、「即ち日本国対馬州なり、旧我が鶏林(慶州の雅名)に隷す、未だ何時に倭人の拠る所と為りしかを知らず」(地誌「新増東国輿地勝覧」)とある。朝鮮が米を下賜し、官職まで授けていたことから、朝鮮の朝廷も、多くの朝鮮人も、対馬を朝鮮領と見た時代があった。それほどお互いの関係は深い。
 対馬は、朝鮮と中央の幕府の間にあって、生きるための智恵を次々と生み出していく。その大きなものが、国書改ざんであった。これは、日朝の平和的秩序、友好を維持するための確信犯でもあった。

【ユネスコ世界の記憶】
・朝鮮国信使絵巻(上下巻)=所蔵:長崎県立対馬歴史民俗資料館
・朝鮮国信使絵巻(文化度)=同上
・七五三盛付繰出順之絵図=同上
・馬上才図巻=松原一征 対馬歴史民俗資料館寄託

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【転載】『二十一世紀の朝鮮通信使 海路をゆく 対馬から大坂』(朝鮮通信使と共に 福岡の会 編)


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