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黄七福自叙伝「黒田大阪府知事に要望したこと」/「大阪府議会の「平和統一」決議案のこと」


 

黄七福自叙伝60

「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」

 

第4章 民団大阪本部の団長として

黒田大阪府知事に要望したこと

一九七八年六月、私は、大阪府庁に黒田了一知事を訪ね、行政差別撤廃問題などについて約一時間、懇談し、協力を要請した。

私は「大阪には約二十万人の在日韓国人が居住している。外国人登録法、出入国管理令について問題点が多く、地方自治体に委任されている手続き面でも複雑で、国政レベルの問題とはいえ、改善してくれるよう知事からも日本政府に働きかけていただきたい。また日本は国際人権規約を批准する方針だが、在日韓国人に対する行政差別撤廃のため、革新知事として解決の先頭に立ってほしい」と要請した。

これに対し、黒田知事は「一定の差別があったことは認める。在日韓国人は日本に居住するに至った歴史的経過が他の外国人とは違うので、特別な配慮が必要と思っている。また税金も納めているのだから、当然それに見合った還元はしていかなければならない。そのためにも行政差別を徐々にでも解決してゆきたい」と答えた。

また黒田知事が「今、在日韓国人が一番困っている点は何か」と質問したので、私は「老後に必要な国民年金の該当者ではなく、住宅ローンなども利用できないこと」と答えると、黒田知事は「住宅ローンが利用できないのはこたえるなあ。衣食住の問題は大切であり、府下でなら在日韓国人も利用できるよう努力したい」と述べた。

黒田知事は、「日系移民はその地に溶けこんで大臣や法律家もいて移住国に貢献しているが、在日韓国人は帰化についてどのように考えているのか」と質問したので、私は「日系移民と在日韓国人では歴史的背景が違うし、一部には帰化する人たちもいるが、韓国人は民族に対する誇りが強い」と答えた。

「北朝鮮を訪問したと聞いているが、韓国へも一度行って、両方を見たら判断の基準になるのでは?」と打診すると、黒田知事は「なかなか外国を訪問する時間がとれないが、機会があればぜひ訪問したい」と答えた。

 

大阪府議会の「平和統一」決議案のこと

一九七五年十一月、大阪府議会が「朝鮮の自主的平和統一の促進に関する決議案」を採択した。

この決議案は「ベトナム戦争が終結し、アジアの平和が一層前進するきざしが見えた一九七五年五月二十六日、米国防長官の発言などからみても明らかなように、アジアは再び硝煙の災に燃えようとしている。今や韓半島を取り巻く情勢は極度に緊張しており、日本及びアジアの平和と安全にとって重大な時期を迎えた。よって政府は、このような情勢の中で、韓半島の自主的平和統一を図るため、次のことを推進することを強く要求する。①韓国での核戦争の挑発を反対する②韓国休戦協定を廃棄し朝米平和協定の締結実現に努力する③「二つの分断国」の固定化に反対し、対韓国政策の方針転換を要望する④南北自主的平和統一の早期実現のため努力する」というものであった。

民団大阪本部は大阪府議会の決議案は内政干渉であると断定し、「抗議文」と「反対声明文」を、大阪府の各政党本部に手渡し、抗議した。

「北傀金日成徒党の手先となっている大阪府議会の決議は、友好国を冒涜する非常識的行為であり、内政干渉であると断定する。同決議案の即刻撤回を要求する」というもので、抗議団を構成、関係要路に抗議活動を展開した。

 

[民団本部の声明文]

①大阪府議会の任務は友邦国の内政干渉でなく、国民の福祉増進と生活問題の解決にあると思う。ところが、府議会は金日成の偽装平和統一案を代弁しているのは実におどろくべきことである。これは確に朝総連の謀略工作にだまされたものと断定する

②金日成共産集団は、今も休戦線一帯に地下トンネルを掘り戦争挑発をしている

③韓国休戦協定は韓半島の平和を維持するため存続する協定である。北傀の所謂「朝米平和協定」の底意は、米軍を撤収させ、第二の韓国動乱をおこす金日成の武力統一策略である

④朴正熙大統領が主唱する六・二三宣言は、統一まで暫定的に南北朝鮮が国連に同時加入し、あくまでも平和的な方法で韓半島の統一を成しとげるもっとも現実的である。

 

[決議文]

①府議会によるこのような、いわゆる外交的案件の決議なるもの自体が何等の拘束力をもたないことは誰もが知っていることであります。それゆえに、われわれはこの決議の政治的背後関係に対し大きな関心をもって注目するものであり、敢えて推測するならば府議会の一部の議員と金日成共産集団の手先である朝総連とが何等かの癒着乃至特殊関係に結ばれているものと考え、われわれは徹底的かつ執拗にその背後関係の糾明にあたる決意であります。

②府議会はこのような決議をしたことによって金日成共産集団の全くの代弁者になり代わり、然かも盲目的に追従する一種の御用機関的存在に変貌したことを友好国の国民としてわれわれは嘆き悲しむものであります。何故ならば、所謂、四項目からなる決議の内容は、金日成があたかも今年の国連総会に提出した韓国問題に関する提案の内容と全く同じ趣旨であり、同案を模倣したに過ぎないからであります。

この決議は非常に軽卒に取り扱われた点を指摘しなければなりません。少なくとも相互間において国交を締結し、友邦関係にある韓国の存在を意識的に無視し、悪意にみちた一方的な金日成共産集団の主張を全面的にう呑みにしたものであり、断じて容認できないことであります。

このようなことはわれわれにとって不当な内政干渉であり、然かもわが大韓民国に対する冒涜であり、主権に対する挑戦行動であると断じてはばからないのであります。

ちなみにわれわれは、わが祖国における現下の情勢に関して祖国の自主的平和統一を阻んでいる最大の原因は正に金日成共産集団にあることを断定し、つぎのような事実を列挙して府会議員各位のご認識を深めると共に、韓・日友好関係をはかりたいと考えるものであります。

韓半島の平和的統一が大韓民国の最高理念ではありますが、それを実現するために不断の努力を続けており、南北の国連同時加入も統一までの過渡的暫定措置であって決して統一を放棄したものではありません。あくまでも南北共存による平和定着を優先させるものであります。

即ち、先ず平和、しかる後に統一のことであります。もしこの大韓民国の方針が二つの分断固定化につながるならば、一九四八年国連の議決に反して南北総選挙を拒否し、既に過去二度も単独国連加盟を提起したいきさつがある金日成こそが二つの分断国家を造り上げた張本人であるといわなければなりません。

われわれ二十万在阪韓国人はこの度の極めて認識不足な府議会の決議に対し、憤懣を禁じ得ないものであり、このような民族的侮辱と自尊心への挑戦を断じて黙視するわけにはまいりません。

そこでこの問題によって生ずる責任もこの決議に賛成した府議会にあることを強く主張し、即時撤回を求め強く抗議するものであります。

 

一九七八年二月の大阪府議会定例議会で、自民党と民社党両党が共同提出した「朝鮮半島の自主的平和統一の促進に関する要望決議案」が満場一致で採択された。

これは、民団大阪本部が各自治体に要望していた「韓国の自主的平和統一に関する請願書」が結実したもの。

民団大阪本部が提出していた要望書は「韓国の自主的平和統一に関する請願書」で、

①韓半島からの米軍撤収既成事実となった現在、平和を定着させるため、南北間で「相互不可侵協定」を締結すること

②南北は一九七二年七月四日に発表された「南北共同声明」の基本精神に基づいて、対話を再開すること

③土着人口比例による南北自由選挙を実施して、統一を達成すること

④北朝鮮は第三十回国連総会の決議に基づき、韓国との対話を通じて、自主的平和統一に関する諸問題を協議すること、

の四項目。

朝総連側は過去十六回におよぶ、共産党と社会党を通じて「北朝鮮の平和統一案」の採決を大阪府議会に働きかけていたが、そうした朝総連側の工作を逆転させる今回の採択を、民団側は高く評価した。


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