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黄七福自叙伝「日本に帰化するということ」


 

黄七福自叙伝75

「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」

 

第5章 在日同胞の将来を考えつつ

日本に帰化するということ

日本政府は、あくまでも少数民族をこの国に残さないという政策であり、追放を最善の政策としたが、追放できないならと同化政策を採用しているのである。

法律の専門家でさえ臆面もなく、「帰化の便宜がよくなって、多様化した」という者がたまにいる。

あたかも、われわれに対する便宜であるかのように言っているが、とんでもないと言わねばならない。

日本政府がわれわれのためにしたことは一つもないのだ。現実の問題として、在日同胞が北送されるとき、日本の世論はもののみごとに一致した。

つまり、在日同胞の”追放”に一致したのである。これは認識すべき峻厳な事実なのだ。

これに対して、われわれは怒り、闘うべきだと、私はそう思う。

日本に住むわれわれ在日同胞は、日本民族対韓民族という認識のもと、架け橋になるという気持を持つべきであり、帰化をして、日本民族に同化していくべきではない。

民団中央本部でも規約を改正して、「帰化した人も受け入れる」とした。

しかし、規約というものは、在日同胞全体を統括し、指導していく根幹となる部分だから、「帰化しても民団、帰化しなくても民団」ということになれば、組織そのものの存在意義を問われることになろう。

「便宜上、帰化でもしようか」という安易な帰化を奨励することにもなり、なんのために民団があるのかということになる。

「不便だから帰化をする」というのが現実であれば、民団自身がもっと努力をすべきだと思う。差別がありながら、帰化に方向を合わせるようでは、これは政策ではなく、迎合ということになる。

「団員が減るから」というが、団員が一人になってもいい、民団は、韓民族の一員であることを自覚する在日同胞の組織でなければならないのだ。

政策のない団体、指導力のない団体は、おのずから求心力を失って、ばらばらに瓦解されていくのみだ。

金鍾泌が来阪したとき、懇談する機会があって、「科学文明が発達し、ソウルが近くなっても、故郷は遠くなった」と嘆いた。

「どういう意味か」というので、「昔は関釜連絡線で八時間、晩に乗ったら朝に着く。いまは飛行機で一時間二十分、ものすごく近くなったが、故郷には一番近い父母がいなくなり、兄弟もいなくなり、イトコハトコになるともう誰がだれだか分からない。故郷があって、親戚がいなくなった」と答えた。

「だから、韓国政府も、在日同胞とは一心同体の関係で、在日同胞の不便がどうすれば解決できるかという暖かい視点から政策を推進してもらいたいし、民団も、在日同胞が韓民族だという視点を優先させて、運動していくべきだ。

でなければ、民団というものはいらない。

私は帰化をしないだろうが、孫たちはするだろう。帰化をしないということは、日本人が悪いからだという意味ではない。

韓昌祐が、「国籍は日本だが、心は韓国だ」と言ったりしているが、それはそれである一面、真情を言っていると理解している。

帰化してしまえば、やはり韓国人だとはいえないし、財産もすべて日本国に帰属するということも考えてみなければならないことだ。

在日同胞は、祖国の発展に大きく貢献した。その献金は決して少ない額ではない。

セマウル運動やソウルオリンピックなどへの献金はその最たるものであろうが、現在の韓国の為政者も、そうした過去の在日同胞の貢献を正しく認識し、政策に反映してもらいたいと、ただ願うのみだ。


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