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黄七福自叙伝「住宅公団関西支社との交渉のこと」/「池田市での児童手当獲得運動のこと」

 

黄七福自叙伝55

「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」

 

第4章 民団大阪本部の団長として

住宅公団関西支社との交渉のこと

また、民団大阪本部と住宅公団関西支社が交した確認書は次の通り。

[確認書]

一九七七年十月二十八日、在日本大韓民国居留民団大阪府地方本部(以下民団と略称する)役員以下二十名と日本住宅公団関西支社(以下関西支社という)元沢慶次管理部長、岩崎弘同募集課係長との会合で、左記の通り話し合いがあったことを相互に確認する。

一、民団が一九七五年七月七日、関西支社に「韓国人は住宅公団での入居を制限されているが、その制限を撤廃するように、申し入れたのに対し、関西支社扇谷了一支社長は当時、入居制限を不当と考えているといった。この日、元沢慶次管理部長も同様に考えていると述べた。

二、関西支社は一九七五年本社での支社長会議で、在日韓国人の入居について制限撤廃を提案した。

三、関西支社の提案に対して本社管理部は右提案を建設省住宅局へ「関西支社の提案」として具申した。

四、正式の公団本社提案としては未だ時期的、その他の理由によってできない仕組みになっている。

五、建設省の回答は検討するとのことであった。

六、建設省はその後も検討中であり、在日韓国人の申し入れに対して住宅公団としては所管外事項であるので、返答しなくてよいとの回答であった。

七、公団と建設省との接触の中で、一般論として相互主義、内国民優先の話があった。

八、民団側は関西支社が在日韓国人の入居制限を不当と考えているなら、文書で建設省に是正を申し入れるべきではないか、と申し入れたのに対して、関西支社は公団の業務処理の実態から、現時点では文書活動の余地はないと回答した。

九、公団として本社組織からさらに建設省に進言等すべきだとは思う。

十、本日のこともさらに本社に言う。

十一、公団職員採用、転売の問題も含めて継続的話し合いに応ずる。

十二、公団からは民団へ中央本部や他府県本部も運動するよう要請があった。

十三、十四省略

一九七七年十一月十六日 日本住宅公团関西支社管理部長 元沢慶次

在日本大韓民国居留民団大阪府地方本部団長 黄七福

 

住宅公団関西支社が支社長会議で提案した公文書内容は次の通り。

 

[第八五回支社長会議要望事項 昭和五十年七月十四日 関西支社]

公団住宅等の賃貸又は分譲を希望する外国人の取扱い方針について

一 過般来、当支社に対して在日本大韓民国居留民団大阪府地方本部(地方団長 黄七福)から日本に在住する韓国人にも門戸を開放してほしいとの強い要請がある。

二 大阪府をはじめ府下の諸都市に対して同民団は、公営住宅の入居制限の撤廃を申し入れており、これに対して関係事業主体は大勢において応諾ないしは前向きに検討するとの姿勢をもって臨んでいる。以下略。

三 公団の従来の取扱い方針は、公営住宅の取扱い方針に準じたものと思われるが、その法的根拠も必ずしも明確でないうえ、このような趨勢の下においてこれを持続することは困難と思われる。

よって、早急に再検討を加えられるようお願いしたい。

 

池田市での児童手当獲得運動のこと

大阪府下では島本町、摂津、豊中両市が在日韓国人に児童手当を支給しているが、一九七七年七月二十七日民団大阪本部は池田市を訪問し、市との対市交渉で同市の若生正市長は在日韓国人に児童手当を支給する旨の回答を行った。

児童手当は日本国の機関委任事務として各地方自治体が実施しているもので、現行児童手当法では第四条で、「日本国籍を有する者」と記し、在日韓国人を締め出している。

このため、民団大阪本部では「在日韓国人は地方住民であり、地方自治法の精神に従って、当然、他の日本人住民と等しく役務の提供を受ける権利を有する」として法改正までの間、市独自の児童手当条例を措置すべきだ、との考えを示した。

これに対し、若生市長は「市民として日本人市民と同等に遇されていないのは差別的次元のものと考える」と述べ、「早急に解決すべく努力したい。実施時期は来年度初めと理解してもらって結構」との回答を示した。

同市によれば、今年度から在市韓国人に対する児童手当制度が条例措置されれば、該当者は五十六世帯八十六人。月額一人当り五千円で、年間五百十六万円の予算が見込まれるという。

一方、私は、今年一月三十一日池田市に若生市長を訪れ、同市における在日韓国人差別撤廃と大阪府市長会副会長の立場から府下の行政差別撤廃の先頭に立ってほしい、との申し入れを、同市長に行った。

私は、「日本政府は在日韓国人に対して同化・追放政策を取っているが、それはいずれ行き詰まる。われわれは在日韓国人としての主体性を守りながら、日本社会に貢献する道、さらに韓日両国、両国民間の友好を深める道を真剣に考えている。そのためには在日韓国人に対するいわれのない差別と偏見はなくさなければならないし、また国や地方自治体における差別行政は撤廃されなくてはならない」と指摘した。

これについて若生市長は「地方自治体独自で実施できる範囲と国の機関委任事務の二点があるが、先頭に立って解決に努力したい。ただ地方自治体が単独で実施すると混乱が生じるので、一度市長会で討議して各市が同じ立場で実施するのが正しいのではないか。北摂七市長会でも今後は各市の共通問題として協議を要望し、全体的な問題として解決の機運を盛りあげていきたい」と述べた。

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