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黄七福自叙伝「泉大津事件ということ」/「吹田事件ということ」


 

黄七福自叙伝31

「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」

 

第3章 民団という組織のこと

泉大津事件ということ

東住吉支部の支団長に就任して一ヶ月ほどして、泉大津事件という思わぬ事件に遭遇した。一九五二年四月二十七日のことだった。

泉大津地区の民族学校(ウリハッキョ)の敷地に居住していた同胞と民戦との立ち退きに関わるトラブルで、その同胞が立ち退きを強要した民戦員を刺殺するという事件だった。

その同胞がたまたま民団員であったことから、民戦はその事件を組織闘争として利用した。それが泉大津事件だった。

ウリハッキョの敷地に、神戸からきた民団系の同胞が小屋を建てていたのを、民戦がその立ち退きを要求した。

その要求が夜で、数人が小屋の中に入ってきて強硬に要求したことから、身の危険を感じた同胞は、台所から出刃包丁を持ち出して、電球を叩き割って真っ暗にし、手当たり次第に刺し、結局、二人を刺し殺した。

慌てふためいた民戦側は「白色テロ」と断罪し、組織の闘争にしたことから、同胞社会のみならず泉大津の地がひっくり返る騒ぎになった。

民団本部にも対策本部が設置され、私と、姜弘実、布施の金栄圭、朴玄の四人で泉大津警察署の署長へ交渉に行った。

「こっちが加害者にされて、白色テロと騒いでいるが、そうじゃない。真相を明らかにして善処してくれ」

そのころの泉大津警察署が木造だった。署長室は玄関から入っていくと左側にあって、そこで署長と交渉していた。

すると、知らぬ間に、全国から動員された民戦員二千人ぐらいが警察署を取り巻いてしまっていた。

警察署員は全員で五、六十人だが、非番などを考慮すると、平時は三十人ほどの陣容だったから、二千人を相手にする方法はなかった。

署長は広瀬という刑事畑あがりで優秀な腕の立つ人だと聞いていたが、多勢に無勢で、彼らは署長室に侵入してきた。

私と朴玄が玄関に出ようとしたが、間に合わず、暴行を受けて、私のメガネがふっ飛んでしまった。

姜弘実と金栄圭は屋根の上にのぼって難を避けたが、署長の機転で、留置所に入れられた。留置所は外からガチャンと閉めると、中からは開かないようになっていた。

その騒ぎは三時間ほど続いたが、GHQの出動によって、無事保護され、群集が引き上げたのを見計らって、署長のクルマで家まで送ってもらった。一つ間違ったら命はなかったところだった。

この泉大津事件はその後二年間余にわたって余韻がくすぶり、民団と朝総連の争いが頻発した。

民団泉大津支部の支団長が金春甲という人だったが、その妹が民戦員の嫁だった。

その妹が、民戦の群集に取り囲まれた兄を助けようとしないばかりか、もっと殴れと叫んだので、金春甲はとうとう死んでしまった。それを見て、共産主義というものはつくづく怖いと思った。

その泉大津事件に遭遇して、泉大津を逃げ出した同胞もいた。その同胞は民団本部裏の中崎寮に引っ越した。

 

吹田事件ということ

一九五二年六月二十五日、左派勢力が「朝鮮戦争反対」を扇動した吹田事件も激しい騒擾事件で、同胞社会を恐怖の坩堝に陥れた。

その吹田事件は、四大公安事件の一つとされている。

前夜、豊中市紫原待兼山の大阪大学北校グラウンドで開かれた「伊丹基地粉砕・反戦・独立の夕べ」に参加した日共や民戦(後の朝総連)の暴徒二千余人が参加した。

うち三分の二が朝鮮人といわれている。当時伊丹基地にはアメリカ軍が駐屯し、伊丹空港から連夜朝鮮半島に向けて爆撃機が飛んでいた。また吹田操車場からも軍事物資を載せた列車が走り、神戸港から朝鮮半島に送られていた。

キャンプファイヤーのあと、吹田操車場に向かい軍需列車運行を阻止し、またその後大阪駅に向かって御堂筋でデモ行進を行う予定だった。

深夜、二手に分かれデモ行進、約一千人は”山越え部隊”と称され、西国街道から徒歩で箕面を通り、吹田操車場に向かった。

もう一隊は”人民電車部隊”といわれ、阪急石橋駅から臨時電車を運行させ、約八百人が服部駅で下車し、吹田操車場に向かった。

二十五日午前八時、暴徒は国鉄吹田駅から列車に乗り込み大阪駅に向かった。国鉄吹田操車場を襲撃し、火災ビンや竹槍で警察機動隊と衝突し多数の重傷者を出した。

民団吹田支部もその騒ぎに巻き込まれ、管内の民団員とその家族らは襲撃の恐怖と脅迫電話などに怯えたのである。

暴徒は、騒擾罪と威力業務妨害によって二百五十人近くが検挙され、百十一人が起訴された。

 


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