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黄七福自叙伝「七・四共同声明のこと」/「富士の社長のこと」


 

黄七福自叙伝39

「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」

 

第3章 民団という組織のこと

七・四共同声明のこと

「七・四共同声明」は、中央情報部長の李厚洛が密使で北朝鮮へ行き、労働党組織指導部長の金英柱との間で合意をみたもので、一九七二年七月四日発表された。

その内容は、祖国統一の原則として、

①自主的統一

②平和的統一

③思想と理念、制度の差異を超越した民族の大団結

という三点が謳われ、赤十字、調節委員会の二つのチャンネルを通じた話し合いが開始された。

金日成体制は、水の一滴ももらさない鉄の団結を誇る独裁体制だったが、韓国は年がら年中、学生デモとかなんとかで騒がしかった。そのため北の共産主義は韓国にとって大きな脅威であった。

そのため、一九七二年十月十七日、朴正熙大統領は「我が民族の至上課題である祖国の平和的統一のために、私たちの政治体制を改革する」という大統領特別宣言が発表し、国会の解散や、政党・政治集会の中止などを決定、韓国全土に非常戒厳令を発した。

これを十月維新といい、統一主体国民会議を構成して憲法改正案を作って国民投票に付することを指示した。

この維新憲法は、十月二十七日に議決され、十一月二十一日の国民投票で確定され、十二月二十七日に発布された。この時期を維新体制と称した。

維新憲法を起草したのは釜山大学教授で、憲法学者の葛鳳根という人だった。当時の状況からして、私は当然の措置だと思った。

翌七三年八月八日に金大中事件が起きたことから、北朝鮮は南北対話を中断、その後も細々と続けられた南北赤十字実務会議も一九七七年には中断された。

金大中事件とは、金大中が何者かにより東京都千代田区のホテル・グランドパレス二二一二号室から拉致されて、ソウルで軟禁状態に置かれ、五日後ソウル市内の自宅前で発見された事件である。

 

富士の社長のこと

民団大阪本部が姜桂重執行部(一九六七年四月~六八年四月)のとき、私は副団長に推薦され、就任した。

富士の社長(韓禄春)と知り合ったのは、姜桂重執行部の副団長のときだった。 ある日、姜桂重が「同じ江原道人やから、知っとけや」と紹介してくれた。江原道という同郷の人だったから、大きな親近感を覚えた。

大阪ミナミで富士キャバレーという大きな店をやっていたから、私は、「富士の社長」と呼ぶようになった。

その後、キングキャバレーなどを開店したりし、大きな財力を有していた。

いつの年だったかよく覚えていないが、正月の四日だったと思う。真田山で乱闘があり、四人が殺され、八人が指をつめて、話によれば明友会という不良組織が解散したということだった。

そのとき、富士の社長が面倒をみている若い者が十五年の刑に服したということだった。

明友会というのは同胞社会ではよく知られた名で、一九五三年ごろ、生野を中心とする同胞不良仲間が寄り集まり、最盛期には六百人を超える構成員がいたというが、一九六〇年に解散したと聞いた。

富士の社長は面倒見がよくて、多くの人を弟分にしていた。

私も「兄さん、兄さん」と言って親しくしているが、私の周囲で、本当に無心な気持で祖国に貢献している愛国者は、富士の社長のほかに見たことがなかった。

永住権申請運動のとき、その費用を全部一人で負担したほどだし、その貢献の度合いは誰もおよばないだろう。それにいくら貢献しても、その見返りは一切要求しなかった。

これほど純粋な貢献は、私はみたことがなかった。それだけに、深く畏敬するに値する人だと思っている。

私は気性が激しいので、左翼勢力と徹底して闘った。

韓青委員長だった姜佶満やヒゲの黒田と呼ばれていた金徳淳も私のボディーガードをやってくれたが、何か大きな集会があると、「左翼の連中に狙われる危険がある」ということで、富士の社長が、屈強な男をボディーガードをつけてくれた。東京オリンピックのときもそうだった。

一九六四年から七〇年にかけて首相を務め、長らく国会議長としても活躍した丁一権は、富士の社長とも懇意にし、適切なアドバイスをしていた。

富士の社長は、故郷に対しても大きく貢献したが、その感謝の意味から、束草に「一福文化会館」という丁一権の「一」と黄七福の「福」をとった会館が建設された。また、私を育てる意味で、いろいろなところに力を入れてくれた。


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